「認知症になってからでは遅い」
相続対策は“亡くなった後”ではなく“その前”の問題です。
ご家族の中で、一番最初に相続のことが気になるのは誰でしょうか?
多くの場合、親ではなく「子ども世代」です。
あなたの親はこう言われるかもしれません。
「自分が死んだら、残された家族でうまく分けたらええ」
「死んだ後のことより、今を楽しみたい」
その気持ち、よくわかります。
元気なうちは人生を楽しむ。
私はそれ自体、とても良いことだと思っています。
ただ一つ、見落とされがちなことがあります。
それは、
「人は亡くなる前に、判断能力を失う可能性がある」
ということです。
相続は100%起こります。
言い換えれば、人は100%亡くなります。
そして多くの場合、亡くなるまでの約10年前後、身体や認知機能に変化が起こる時期があります。
もし親が認知症になったら――
誰が介護をするのでしょうか?
長男の嫁かもしれません。
近くに住む娘さんかもしれません。
でも、ここに相続の大きな問題があります。
例えば、長男の嫁。
どれだけ献身的に介護をしても、法律上の相続人ではありません。
「面倒を見てくれた人に、何か残したい」
そう思っていても、元気なうちに準備をしていなければ、その想いは実現できないことがあります。
だから私は、
“介護への感謝を形にすること”も相続対策だ
と思っています。
遺言書や生命保険など、法的に残せる方法があります。
口約束だけでは守れません。
「ホームに入るから迷惑かけへん」
親御さんから、こんな言葉を聞いたことはありませんか?
「誰の世話にもなりたくない」
「施設に入るから大丈夫」
でも実は、そこにも落とし穴があります。
認知症が進み、本人の判断能力が低下すると、
家族であっても親の財産を自由に動かせません。
例えば、
- 実家を売却して施設費用に充てたい
- 親名義の預金を解約したい
- 高齢者施設の契約をしたい
こうしたことが、家族でも簡単にはできなくなる場合があります。
親のお金なのに、子どもでも動かせない。
「家族だから当然できる」と思っている方ほど驚かれます。
実際、厚生労働省の推計では、85歳以上の高齢者では認知症の割合が大きく高まるとされています。
つまり、
“認知症への備え”も、相続対策の一部なのです。
認知症になってから、銀行へ駆け込んでも…
実際に、こんなケースがあります。
親に認知症の症状が出始め、
「口座が凍結される前に」と慌てて銀行へ向かったご家族。
定期預金の解約をしようとしたところ、金融機関の担当者が親御さん本人にいくつか質問をしました。
受け答えの状況を確認した結果、
「申し訳ありませんが、お手続きを進めることが難しい状況です」
となり、実質的に預金を動かせなくなるケースがあります。
金融機関によって対応は異なります。
ただ、共通しているのは、
“認知症になってからでは選択肢が減る”
ということです。
もし元気なうちに家族で話し合っていたら。
もし早めに準備していたら。
防げた問題だったかもしれません。
相続対策とは、財産の分け方だけではありません。
「もしもの時に、家族が困らないようにしておくこと」
私はそう考えています。

